三軒茶屋「uguisu」のオーナー
三軒茶屋で、夜カフェuguisuを営む。自身はカフェと呼んでいるが、お客様の9割はワインを飲みに来る、大人の隠れ家敵スポット。

店の内装にも少し飽きが来ていたから、ちょっとしたイメチェンだ。
「新しく作る」といっても、新品の材料を使ったりはしない。
なぜなら、僕は使い込まれた木の風合いがたまらなく好きだから。
uguisu には、僕が拾って来たり、あるいは誰かから頂いたりした古い廃材が沢山ある。
これから何に変身するのか、未知の素材達。
先ずはその廃材のいくつかを組み合わせてみる事から始める。
選んだ廃材をのこぎりで切り、ドリルを使ってネジ留めする。
設計図なんて必要ない。シンプルに天板に足を付けるだけ。
あとは10倍程度に薄めたステインを布に含ませ、廃材に直接擦り込む。そうする事で木のトーンが少し落ちて、ぐっとシックな雰囲気に早変わりする。
そして生まれた、この世にただ一つのテーブル。
捨てられていた古い材木が、新しく生まれ変わる瞬間だ。
友人が手土産にワインを持ってきてくれた。フランスはアルザス地方の白ワイン。
せっかくならアルザスワインに良く合う料理を。という事で、僕はシュークルートを作る事にした。シュークルートはアルザスの伝統的郷土料理。同じ土地で生まれたワインと料理の相性は抜群にいい。
@ 完成間近のテーブル。 uguisu の店内には洋と和が混在している。共通項はただ一つ。「時間を経た物」だ。
A 廃材を使った家具は、出来上がった瞬間から空間に馴染んでいる。まるでずっと前からそこにあったかのように。
B アルザスを代表する造り手、マルセルダイス(手前)とピエールフリック(奥)によるワイン。どちらもビオディナミといって、化学肥料や農薬は一切使わない農法で作られている。ビオワインは僕の大好物でもある。ちなみに uguisuでも、リストの大半をビオワインが占めている。

たまたまだけれど、この料理を作るのに最高の鍋があった。
ストーブという名の無骨なホーロー鍋だ。
この鍋もやっぱりアルザス生まれ。フランスのレストランの厨房では、よく使われている逸品。
ストーブに具材を入れたら、この鍋ごとオーヴンに放り込む事が出来る。
オーヴンの中で慌てずに静かに煮込んでいくと、肉がびっくりするほどに柔らかく、そしてふっくらと仕上がる。
鍋の中で、具材同士が時間をかけてじっくりと馴染んでいく。
なんだか uguisu と良く似ている。
料理も、家具も、環境も、時には人間関係だって、ゆっくりと時を経る事で、一つに調和していくと僕は思う。
そんなことをぼんやりと考えながら、後はただただ待つ。
丁寧に時間をかけた分、その喜びは大きい。
数時間後、ストーブの蓋をはずすと素朴で美しいシュークルートが現れた。
C シュークルートを作る。調理方はいたってシンプル。具材を塩コショウで味付けして鍋ごとオーブンに入れて煮込む。後は火と時間が美味しさという魔法をかけてくれる。
D シュークルートが完成。分厚いストーブ鍋の中でじっくり煮込んだおかげで、素材の旨味が存分に引き出されている。素朴だけれど力強い、アルザスの母さんみたいな料理。
E 作ったばかりのテーブルで夕食。上質なアルザスワインにシュークルート。自然と笑みが漏れてしまう。
紺野真(こんのまこと)プロフィール
1969年7月9日生まれ/東京都出身
2005年5月に三軒茶屋で、uguisuをオープン。
リーズナブルで良質なワインとフレンチ、そして何よりも、ゆったりとした時間を提供中。



































